
「クチコミを書いてくれたら一品サービス」「投稿してくれた方は次回割引」。この頼み方を考えている店には、確かめる線が二つあります。景品表示法のステルスマーケティング規制(ステマ規制)と、Googleのクチコミのポリシーです。
消費者庁のステルスマーケティングに関するQ&Aは、予約サイトの口コミ投稿を条件にサービスを割引する例について、その投稿は通常「事業者の表示」には当たらず、「告示に違反しないと考えられます。」と答えています。一方でGoogleのマップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシーは、クチコミの投稿と引き換えに、お金や割引、無料の商品などを出す行為を禁止しています。法律の線で問題になりにくい依頼でも、Googleマップのクチコミ欄では削除の対象になります。
この記事は、消費者庁の運用基準とQ&Aに書かれている範囲と、Googleのポリシーに書かれている範囲を分けて並べます。あなたの店の頼み方が違反かどうかは判断しません。運用基準も、関与があったかどうかは実態を踏まえて「総合的に考慮し判断する」としています。
ステマ規制が見るのは、店がクチコミの内容に関与したか
令和5年10月1日から、広告と分からない広告が規制の対象に
消費者庁は「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」と題したページで、ステマを「広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すこと」と説明しています。西暦では2023年10月1日の施行です。
対象になる表示には、「SNS投稿、レビュー投稿など」のインターネット上の表示も入ります。反対に、「個人の感想等の広告でないもの」は対象外です。
施行日より前の投稿も、ここで切れるわけではありません。Q&AのQ20は、施行前に行われた「事業者の表示」に当たる投稿が施行後も表示され続けている場合、明瞭になっていなければ「行政処分の対象となる可能性があります。」と答えています。
規制を受けるのは店の側です。同じページは「規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。」と書き、依頼を受けて投稿したインフルエンサー等の第三者は対象にならないとしています。クチコミを書いたお客さんではなく、頼んだ店が問われる形です。
判断の軸は「表示内容の決定に関与したか」
お客さんの投稿に見えるものが、店の広告として扱われるのはどんなときか。消費者庁のステマ告示の運用基準は、次のように定めています。
「事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合である。」
店が第三者に表示をさせる場合の例として、運用基準が最初に挙げるのは「事業者が第三者に対して当該第三者のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合。」です。
はっきり頼んでいなくても、店がお客さんの書く内容を決められるほどの関係があれば、関与とされることがあります。そのときの判断の材料として、運用基準は次のものを挙げ、これらの「実態も踏まえて総合的に考慮し判断する」としています。
- 店とお客さんの具体的なやり取り(メール、口頭、送付状などの内容)
- 店が提供する対価の内容
- 対価を出す主な理由(宣伝する目的かどうか)
- 対価を出す関係がどれくらい続いてきたか、これから続くか
ここでいう対価は、お金や物に限りません。運用基準は対価に「金銭又は物品に限らず、その他の経済上の利益(例えば、イベント招待等のきょう応)など、対価性を有する一切のもの」が含まれると注記しています。Q&Aも、割引を「割引程度の対価」と呼んでいます。
違反と判断されたときに店が受けるもの
Q&AのQ2によると、違反が認められた場合、消費者庁は誤認の排除や再発防止策の実施などを命ずる「措置命令」(行政処分)を出します。ステマ告示の違反そのものは、課徴金納付命令の対象ではありません。ただし、違反の中に優良誤認表示や有利誤認表示が含まれる場合は、課徴金納付命令の対象になることがあります。
違反の事実が認められなくても、違反のおそれのある行為には「指導」(行政指導)が行われます。
割引や無料の品と引き換えのクチコミは、消費者庁のQ&Aでどう扱われるか
内容を指定しない割引は「通常、事業者の表示には当たらない」
Q&AのQ6は、サービスの利用後に予約サイトの口コミ投稿をすることを条件に、サービスを割引価格で提供する例です。答えは「前段の場合、口コミ投稿の内容についての指示は含まれていません。」から始まります。
続けて、割引の位置づけを「割引程度の対価であることも踏まえれば、表示内容の決定に関与しているとはいえません。」と書いています。結論は、通常は「事業者の表示」には当たらず、「告示に違反しないと考えられます。」というものです。
ECサイトのレビュー投稿を条件に次回のクーポン券を出す例(Q7)も、「Q6と同様に考えることができ」るとされています。一方で、インフルエンサーに個別に投稿を頼んで報酬を払う例(Q19)は、投稿内容の指定が無くても「「事業者の表示」に該当する可能性が高いといえます。」とされています。割引程度の対価と、個別の依頼への報酬は分けて読む必要があります。
運用基準にも、ECサイトのレビューへの謝礼として次回割引クーポン等を配る例があります。ただしこちらは、投稿の内容について「情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われておらず」、購入者が自分の意思で内容を決めたと認められる場合に限った記述です。
Q6は予約サイト、Q7と運用基準はECサイトの例です。Googleマップのクチコミを名指しした例は、運用基準とQ&Aの範囲では見当たりません。
「星5」や褒めるコメントを条件にすると事業者の表示になる
同じQ6の後段は、口コミ投稿に「星5(☆☆☆☆☆)」を付けることを条件にした場合です。答えは、「事業者は表示(投稿)の内容を決定しているといえるため」、事業者の表示に「当たると考えられます。」というものです。
その場合は、「「事業者の表示」であることを明瞭にしなければ、告示に違反します。」とされています。星の数でなく、品質や内容、価格などを「推奨するコメントをすることが条件とされている場合も同様です。」とも書かれています。
明瞭にする方法として運用基準が挙げるのは、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章です。ただし運用基準は、これらの文言を使っていても「表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められない場合もある。」と注記しています。広告であることの表示のしかた(動画やアフィリエイトでの書き方)は、この記事の対象外です。
スタッフや家族のクチコミ
従業員が自分のSNSアカウントで自社の商品の感想を投稿する例(Q3)について、Q&Aは「それだけで直ちに」違反と判断されることはないとしています。ただし、販売を促進する地位や立場にある人、たとえば「販売や開発に係る役員、管理職、担当チームの一員等」が販売を促進するための投稿をすれば、事業者の表示に当たると考えられるとしています。その立場の人がほかの人に指示して投稿させる場合も「同様です。」とされています。
運用基準も、従業員の投稿が店の表示に当たるかは「従業員の事業者内における地位、立場、権限、担当業務、表示目的等の実態を踏まえて」判断するとしています。
所属を書けば足りるわけでもありません。Q12は、「私は〇〇社の社員です。」等と所属が明示されているだけでは、事業者の表示であることが明瞭とは「必ずしもいえない」と答えています。
家族が書くクチコミについては、運用基準とQ&Aの範囲では名指しした記述が見当たりません。
消費者庁の記述を並べた表
| 店がすること | 消費者庁の記述(Q&A) |
|---|---|
| 内容を指定せず、口コミ投稿を条件に割引する | 通常、事業者の表示には当たらない(Q6 前段) |
| 星の数や推奨するコメントを条件に割引する | 事業者の表示に当たり、明瞭にしなければ違反(Q6 後段) |
| ECサイトのレビュー投稿を条件にクーポンを出す | Q6と同様に考えることができる(Q7) |
| 販売を促進する立場の従業員が宣伝の投稿をする | 事業者の表示に当たると考えられる(Q3) |
| 事実に反するレビューの修正を頼む | そのことのみで事業者の表示に当たることはない(Q9) |
| 感想を自社に都合の良い内容に改めるよう頼む | 修正されたレビューは事業者の表示に当たる(Q9) |
Googleのポリシーは割引や無料の品と引き換えのクチコミを禁止
インセンティブ付きのクチコミは削除の対象
Googleのポリシーは、販売者やユーザーに禁止する行為として「クチコミの投稿や否定的なクチコミの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為。」を挙げています。
「評価の操作」の項では、「評価の操作には、インセンティブ付きのクチコミや偏ったクチコミが含まれます。これらは禁止されており、マップから削除されます。」と書いています。該当する例は「企業が提供するインセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)が誘因となって投稿されているコンテンツ。」です。
消費者庁のQ&Aと違い、ここには「内容を指定していなければ」という分かれ目がありません。割引そのものが禁止の対象に入っています。
スタッフや家族のクチコミは「利益相反」
同じ「評価の操作」の項は、「利益相反に基づくコンテンツ」も挙げています。利益相反の中身は「現在または過去の雇用関係、契約関係や顧問関係、利益相反となるその他の職業上のつながりや個人的なつながり(業界の競合他社、家族関係など)」です。家族関係は、Googleのポリシーでは名指しされています。
頼み方で禁止されていることと、許されていること
ポリシーは、依頼のしかたそのものにも線を引いています。
| 店がすること | Googleのポリシーの記述 |
|---|---|
| クチコミの投稿と引き換えに割引や無料の品を出す | 禁止されている |
| 否定的なクチコミの修正や削除と引き換えに特典を出す | 禁止されている |
| スタッフや家族、取引先に書いてもらう | 利益相反に基づくコンテンツに当たる |
| その場で評価を残すよう客に要求する | 禁止されている |
| 書いてほしい内容を指定して頼む | 特定のコンテンツを含めるよう依頼できない |
| スタッフに一定数のクチコミを集めるよう求める | 禁止される行為に当たる |
| 肯定的なクチコミだけを選んで募る | 禁止されている |
| 特典を付けず、内容に影響を与えずに頼む | 許可されている |
許可される行為は「インセンティブを提供したり、評価やクチコミの内容に影響を与えようとしたりせずに、実体験に基づくコンテンツの投稿を募ったり促したりする行為。」と書かれています。特典を付けず、内容に影響を与えずに頼むこと自体は禁止されていません。


特典を外してクチコミを頼むときの点検表
この記事の点検表は、Googleのポリシーの禁止事項と許可される行為から、DigitalGOAT編集部が組んだものです。依頼のPOP・ショップカード・声かけを変える前に、上から順に確かめてください。
- 依頼の文面に、割引・無料の品・ポイントなどの特典が書かれていない
- 星の数や料理名など、書く内容を指定する言葉が入っていない
- その場で書いてもらうよう求めていない
- 満足していそうな客だけを選んで頼んでいない
- スタッフに集める件数を割り当てていない
- スタッフや家族、取引先に書いてもらっていない
声かけの文面は、DigitalGOAT編集部の推奨する「ありがとうございます!もしよろしければ、Googleで感想を書いていただけると...」の型で足ります。特典にも内容にも触れない頼み方です。
満足した客だけにクチコミを頼み、不満のある客をGoogle以外へ誘導する手法を、レビューゲーティングと呼びます。DigitalGOAT編集部の推奨では、これをGoogleのポリシー違反として扱い、改善のためのアンケートはクチコミの依頼と切り分けて運用します。MEO対策の代行業者を選ぶときも、DigitalGOAT編集部の推奨はクチコミの自作自演を提案する業者を避けることです。
依頼用のリンクやQRコードの作り方と置き場所は、クチコミ管理の全体像にまとめています。低評価が付いたときの削除申し立ての線引きは、クチコミ削除依頼の手順で扱っています。
まとめ:特典は外し、書く内容に触れずに頼む
- 景品表示法のステマ規制は、令和5年10月1日から、店がクチコミの内容の決定に関与したかを見ます。
- 消費者庁のQ&Aは、内容を指定しない割引を通常は事業者の表示に当たらないとしています。「星5」を条件にした割引は、事業者の表示に当たるとしています。
- Googleのポリシーは、割引や無料の品と引き換えのクチコミを禁止しています。内容を指定したかどうかは問いません。
特典を外した依頼の文面が決まったら、次はリンクとQRコードを用意し、届いたクチコミに返信する運用を回す段階です。